Sam's

読書記録、ギフテッド/2EやACに関して。

「鈍感な世界に生きる 敏感な人たち」イルセ・サン

 

HSPとは? 

HSP = High Sensitive Person

"刺激に敏感な人"または"感受性の高い人"の総称としてエレイン・アーロンによって考案されました。HSPは5人に1人、あるいは15~20%の割合で存在すると考えられています*1

HSPは環境による影響を受けやすく、適切な環境下ではHSPでない人よりも高いパフォーマンスを発揮すること*2、共感性を司る脳領域が非HSPの人々に比べて活発であること*3、この性質は幼少時より変化しないことが、それぞれの研究によって明らかにされています*4

 

HSPの下位分類

HSPには内向的/外向的な及び、HSS/非HSSといった下位分類が存在します。

ここで、注意するべきは、HSPが"感受性の高い/刺激に敏感な人"の総称であって、"内向的な人"の総称ではないことです。

 内向的なHSPが7割を占めているのに対し、外向的なHSPは3割となっています。内向的とは、"人間存在の内面について興味を持っている"ことを指しており、自身のみならず、他人の内面世界にも興味を持つ人々のことです。外向的に関しては、本書内に記述はありませんが、他人との関わりによって活力を得る人たちのことだと思われます。

 HSSとは"High Sensitive Seeking"の略称で、"刺激を求める人々"を意味します。これは、HSPにとっては厄介な性質で、HSSの性質によって自ら疲弊する環境に積極的に参加しようとします。根本的原因は、反復的行動に対する反動では無いかと思われます。

 

HSPの7つの特徴

イルセ氏によると、HSPには以下の7つの特徴が認められることが多いようです。

1.情報吸収力の高さ

2.音や匂いに敏感

3.深く多面的な思考

4.危機管理能力の高さ

5.共感性の高さ

6.誠実かつ責任感が強い

7.想像力の豊かさ

 これらの特徴は感受性の高さに由来していて、情報吸収力/想像力/ 音・匂いに対しての敏感性が齎され、多面的思考へと繋がっていくと思われます。

 誠実性の高さについては、どのような経緯なのか疑問でしたが、本書では

HSPにはごく幼い自分から、不穏な空気を敏感に感じ取り、どうにか苦心してきた人が多いようです。

HSPは不穏な空気を感じ取ると、責任を取らなくてはならないと思い、すぐにどうにかしようと頑張りすぎてしまいます。

 との記述がありました。

 つまりは、他人が未だ感じていない不穏な雰囲気、もしくはその兆候を先んじて感じとってしまう彼らは、自ら率先して改善しようと努力するようです。HSPの危機管理能力はこのようにして育まれていくとみられます。

 これついては、HSP自身を防衛する機能も含まれているように思われます。他人の負の感情にも同調しやすい彼らは、それを回避する為に状況の改善に走るのではないでしょうか。

 そして、HSPにおける誠実性は他者及び自身に対する不快感を回避するための能力であると考えます。

その他の内容

本書では以下のような内容も書かれています。

HSPの抱える問題と解決策

 1.自分自身への高度な要求

 2.罪悪感と羞恥心

 3.恐怖心からの憂鬱

 4.怒りの表出が上手くできない

怒りの放出に関しては、「相手を叱る」のでも「自分を責める」なく、中間の策を講じるようにと、あります。「自身の気分を害した」と相手を叱るのではなく、「自分は傷きやすいのだ」と自分を責めるのでもなく、「自身について言及すること」がそれにあたります。

自分自身には、私は何を望んでいるのかということ

相手に対しては、私に何を望んでいるのかということ

これらを聞くことで、HSPの共感性を活かした策を取ろうということです。

 

「鈍感な人」との付き合い方

 自身がHSPであることを周囲に伝えることをはじめとして、非HSPの人々と付き合うための方法が書かれています。

 

自身が興味を持ったのは、対話に関する項目です。これは、一方的な会話を、互いの反応を意識することで、対話へと発展させようという試みで、夫婦や恋人同士のセラピーに用いられている方法のようです。

会話に関しての反応を「受容」「共感」「影響」「展開」「理解」の5つに分類することで、自身/相手の会話に関して、適切な反応を返してもらう/返そうとします。

展開について取り上げると、これは相手の話の内容について、詳しく話すことを求める、または質問をすることになります。但し、相手の会話を遮ることが無いように、予め(途中で質問していいか、等)質問のタイミングを伺っておく必要があります。

 

この他には、

 ・自身の対応出来る限界点を定め、それを知らせること

 ・疲弊状態に陥る前に適度な休憩を挟むこと

 ・表面的な会話と深い会話の時間を分けて取ること

 ・HSPの理解者をパートナーにする

といった内容が代表的なものですが、周囲に知らせることで理解を得るのは難しいと思いますので、適度な休憩や、会話種別を区切ることなど、自身でコントロール出来ることから始めていくことが肝要です。また、子育てに関しても言及されています。

 

HSPな自分との付き合い方

自分自身への理解を中心とした関わり方を取り上げています。

HSPの能力への理解、及び過剰な刺激に対する対応策、自己肯定を強く持つこと、心理セラピーを受けることなどが主に挙げられています。

 

後記

自分との付き合い方に関しては、ほぼ未記述ですが、その他の項目に関しては記述済みなので、公開することにします。

HSPという概念を知る手助けになれば光栄です。

初投稿なので勝手が掴めませんが、とりあえずは目次の重要さを学びました。

*1:HSPの比率に関しては、その判別方法が自己申告制であること、質問内容が曖昧なことから疑問視されているが、著者はユングの提唱する”内向的な人”の割合からも大きく乖離した数ではないと考えている。

*2:[Boyce他,1995]によって、非HSPの人々に比べて環境への適応性が良くも悪くも高いことが報告されている。不適切な環境にある際も、彼らの健康状態は、その他の人々よりも、悪化してしまう。

*3:考案者であるエレイン・アーロン自身によって、HSPの人々の共感性を司っている脳領域(ミラーニューロンを含む)が、それ以外の人々に比べて活発であることが確認されている。[Aron Elaine,Brain and Behaivor,2014]

*4:心理学者ジェローム・ケーガンによって生後4ヶ月の赤ん坊500人を対象とした調査が行われた。この研究は2,4,7,11歳の時に改めて追跡調査が行われており、その際にも同様の反応を示したことが報告されている。