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Sam's

読書記録、ギフテッド/2EやACに関して。

「ギフテッド 天才の育て方」杉山登志郎、岡 南、小倉正義

 

ギフテッドとは? 

杉山登志郎はギフテッドについて次にように述べている。

「与えられた天賦の凸凹(でこぼこ)」という意味を込めて、ここではギフテッド(天才)ということばを用いたい。本書p.15より引用

凸凹は各々が併せ持っている発達の優れた/劣った箇所を表しており、ダーウィンなどの著名な人物の持つ発達障害ならではの特性を紹介している。

また、非定形型自閉症を持ちながらも名門建築学校を卒業したA君を筆頭に、それぞれに抱える認知的特性を活かそうとする6人をその実例として挙げている。

認知的特性

私が特に惹かれたのは、認知特性に関しての項目である。筆者は岡 南(おか みなみ)氏。

三章から六章までの四章にも渡って詳細に記述がされ、その章題は以下の通り。

第三章 視覚優位型の世界

第四章 視覚優位型の子供達への特別支援教育

第五章 聴覚優位型の見え方の障害を支援する

第六章 視覚認知から見た文字の認知をめぐって

 本書 p.4 目次より引用 

 
視覚優位型

視覚優位型は「同時処理*1」に優れており、数学や幾何学に向いているらしい。

教育指導の方策*2としては、以下の5項目が挙げられている。

・本質を含む課題から始める

・全体から細部へ至ること

・関連性を重視すること

・視覚的、運動的手がかりを用いた課題解決を図ること

・空間的な手がかりや統合的な手法によって問題解決を図ること

 

「進化論」でお馴染みのチャールズ・ダーウィンも視覚優位者であった。

彼らは、文字を読むよりは図式によって理解することの方が容易く、より本質に近づくことが出来る。映像的思考を用いる。

また、映像的長期記憶に優れており、場面を覚えることが得意である。しかし、一長一短の能力であることが、本書で次のように言及されている。

ダーウィンは自分の鮮明な記憶を退けることができないとも書いている。

この視覚記憶が消えないことは、よいことの記憶であるならば問題はないが、悲しくつらい記憶において、彼をひどく苦しめたようである。

本書 P.48より引用

視覚優位者の苦手分野として短期記憶や、聴覚を主とした情報の選択が挙げられる。

前者についてはダーウィン自身の記述が残っている。

「私の記憶力は、ある意味では非常に貧しく、一つの日付けや、一行の詩さえも、数日以上覚えていられたことがなかった。」

ダーウィン自伝」筑摩書房,1972,P.172より引用

 

聴覚優位型

聴覚優位者は「継次処理*3」に優れている。

 教育方針としては以下のように挙げられている。

・段階的な考え方

・部分から全体へ

・順序性の重視

・感覚的、言語的手がかりを用いて課題解決を図る指導

・時間的手がかり、分析的手法を用いて課題解決を図る指導

聴覚情報、また文字や線といった平面的事象を記憶することに長けている。

 

一方で、聴覚優位者は、相貌失認を始めとした障害に陥ることがあり、その一因は明暗に対する感度が低いことで、遠近感の消失してしまうことにあるようだ。

遠近は影を始めとした明暗によって支えられており、明暗を感じられない彼らは、事物がそれぞれ独立して見える。本書に、遠近の有無による視界の変化を比較した図が載っているので是非確認してほしいが、遠近を普段感じられている人々にとって、この図は驚きをもって迎えられるだろう。実際、私は新たな視点を得ることが出来た。

このことは、ドナ・ウィリアムズという自閉症の女性を実例として、より詳細な記述が加えられている。

 

あとがき

自身が気にしていたギフテッド、特に視覚優位型に関しての情報が多く、理解の助けとなった。今回、2Eについて書かれた項目について触れてはいないが、そちらについても多くの分量が割かれている。

また、アメリカのギフテッド教育を取り巻く150年ほどの変化についても触れられており、どのように現在の教育制度が成立したのかを確認することが出来る。

日本のギフテッド教育を考える上で重要な提言も数多く記載されていて、ギフテッドを取り巻く特殊教育の基本を抑えるにふさわしい書籍であると言える。

*1:

処理方法を限定せず、自由に探索しながら処理する能力で、一度に多くの情報を空間的、全体的に統合し処理する方法である。

本書P.64より引用

*2:

視覚優位、聴覚優位ともに「調書活用型指導で子供が変わる」P.29 引用部分に、変更を加えた。

*3:

処理の方法が決められている状況で処理する能力で、情報を一つずつ時間的な順序に従って、連続的に処理していく方法である。

本書P.64より引用